はー、青島ビール飲みてえ

 昨日(というか今日の早朝)のできごと。
 私の家は横浜のローカル線沿いにあるため、都内からの終電がちょいとばかし早い。乗り換えを一つ諦めると結構その時間が延ばせるので、タクシーで補って帰宅することも多い。昨日も乗り換え駅でタクシーに乗った。が、財布に千円札が一枚しかない。小銭もわずか324円。ポケットというポケットを探るも収穫は23円。我が家までは大抵2000円弱。これでは帰れないではないか!!!!ものすごく慌てながらもタクシーの運ちゃんと笑顔で会話するぼく。
運「この辺で最近タヌキが出るんだよお〜」
ぼく「あー、なんか最近見るようになりましたね〜(それどころじゃない!!アンタこの乗客金が払えないよ!!)」
運「私んちの近くのタヌキはさあ〜」
 とにかく帰れない。どうする?引返すか?乗り換え駅の周りならまだマックくらいはやってるかもしれないぞ!!とか悩んでいるうちに上がるメーター。ヒートアップする運ちゃんのタヌキトーク。このまま引返しては結局1300円オーバーだ!この付近の夜道は怖すぎる。皆さんが横浜にどういうイメージを抱いているかわからないが基本的には郊外なのだ。ベッドタウンだ。そりゃタヌキも出る。車通りもほとんどない。しかもこの辺は古い下町だからカジュアルに廃墟がある。夜歩くの無理!こえーよ!!メーターが1210円まで上がったところで道路沿いにガスト発見。ガストで朝を待つしかない!
運「しかし人間ってのはタヌキも食っちゃうんだから残酷だね」
ぼく「お、下ります!!」
運「あれ、○○駅まで行かなくていいの?」
ぼく「いいです!ちょっと用事が」
 こんな団地しかないとこで用事ってなんだよ!と誰にもつっこんでもらえないまま1210円を払い下車。寒さに震えながらガストに向かう。…ところで読者諸君(いないよ)、矛盾にお気づきだろうか。私は1347円しか持っていなかった。今1210円支払った。ガストのメニューは果たしておいくらからであろうか。
ぼく「入れねえじゃん!!!」
 ガストだけが煌煌と輝く夜道にこだまする悲痛な叫び。入れない。入れないよ!!どうする!?どうするもこうするも歩いて帰るしかない!こんなことならもうワンメーター分家に近づいておくべきだった。寒いよ。暗いよ。暗いよう。立ち止まっていても身体が冷える一方なので歩き出した。ガストを通り過ぎるとまー暗い。超暗い。確かに暗いっつってもここ一応横浜市だからそこまでじゃないんだが、でもさ、中途半端に明るいから、ほら、あそこに………ひえええええええええ
ぼく「きゅっきゅっきゅ おばけーのきゅっ ぼーくはおーばけのきゅーたーろう!」
 怖いわ寒いわで旧おばけのQ太郎主題歌が口をついて出た。
ぼく「あーたーまーのてっぺんに!けがさんぼん!けがさんぼん!!(T_T)」
 夜道を一人、おばけのQ太郎を歌いながら歩く就活生。悲しい光景である。だーけーどーもーぼーくはー 飛べない…。飛べないし暗いしなんか将来の不安が襲いかかってくるしで延々歌いながら歩きやっと家に着いた。凍えきった手で鍵を取り出し、開けようとするが…
 開かない。
 開かないんですけど!!!!え!?開かないよ!?開かない!家に電話してみるも誰も起きる気配がない!開かない!開かないよ!!ここまで苦労して帰ってきたのに!窓もがっつり雨戸閉まってるし!財布の中には137円。午前二時。泣けてきた。ガチャガチャやってるうちに、うちの並びの中華料理屋のおかみさんが顔を出した。店とは別にある家に帰るところらしい。
おかみさん「あれ、ずいぶん遅いねえ」
ぼく「開かないんです…(T_T)」
おかみさん「お父さんは?」
ぼく「起きないんです…(TAT)」
おかみさん「笑」
 途方に暮れた22歳を哀れんでくれたらしく、おかみさんがお店に入れてくれた。
おかみさん「残り物食べる?」
ぼく「食べます!!」
 もう夜中の二時とかがっつり夕飯食った(ていうか飲んだ)とか関係ない。遠慮もない。食う。おかみさんがわざわざ温めてくれた残り物をぱくついていたら、小学生の頃を思い出した。そういえば、よく家に入れなくてここでお菓子をもらって食べてたなあ…あれから十数年、進歩ないなあ…おかみさん、やさしいなあ…老けたなあ…時間経つの早いなあ…
 おかみさんは膝掛けと上着を貸してくれて帰り、結局お店で朝を待った。お礼はちゃんとします。さすがにビールはねだれなかったので、いま猛烈に青島ビールが飲みたいです…誰かのもうよおいしい中華料理屋教えるから…あ、おかみさんのお店はうまいけど家に近すぎて恥ずかしいからいやです。