約束をしたはずなのにあのこたち私を抜きで遊んでる夏
感じやすい子どもの体躯で息をするまだ暫くはそれを堪えてる
吠えたくる夜中の犬はかなしくて昼間の犬はねむってゐる様
赤チンにオキシドールに絆創膏それだけ入れた抽斗のにおい
夏が嫌い日射しが日々を殺してて遠くとおくで何かのお祝い
約束をしたはずなのにあのこたち私を抜きで遊んでる夏
決めつけでクラスメートに呆れられ私じゃないって言えなくて夏
サンダルで水たまりの中突っ込んで生暖かさに打ち震え夏
少女らは白濁駅を塗りたくるSPFにとけていく夏
茶もなしに湿気ったせんべい食うような青い身体持て余し夏
ひとりでも彼女の生理が来なくても平等に朝がやってきて夏
きみは未だ何んにも知らずにゐて下さいプール帰りの重たいからだで
洗剤を抛りこむとき陽がさして日々のうつろが曝されている
朝が来てきのうが夢でないことを知るときひとり台所に立ち
うしなわれ二度とは戻らないものはとおくの海で泳いでいるの
そのときはあなたのことが好きだったねむれる虫の子供の記憶で
坂道を転がり落つる未練なりシャンプー変えたの失敗だったな
ちぎられる芋虫みたいだ私たちまだ生きなくちゃ沖漬食べよう
芯の白茹でたキャベツを噛む音が脳に響いたひとりの部屋で
エントロピー一生そうして祈ってろやけどを冷やす氷を食べる
皿を割る音が響いた白昼だあの日に全部置いてきたのだ
鳥は飛ぶ蟻は地を這うそれだけのそれだけのことがわからないのか
痩せなくちゃ言ってるうちは痩せないよここより他に世界はないし
(以上、自選・夏の短歌でした)