ラブライブの映画がものすごくつまらなくて私の青春は終わったと思った

 私は舞台芸術におけるあの「腹から声を出している感じ」がどうも受け入れられない。だから演劇に苦手意識がある。
 私が実際に見たことのある演劇は二つだけで、三谷幸喜の「桜の園」とケラリーノ・サンドロヴィッチの「三人姉妹」だ(要するにチェーホフが大好きなんですね)。
 三谷幸喜はコメディだから別に大声出してても変じゃないんだけど、ケラリーノのほうは「あー……なんか……演劇だな……」みたいな感じでかなり引いてしまい楽しめなかった。まあ一緒に見に行ったケラリーノファンの友人に「これのどのへんがケラリーノっぽいの?」と聞いたら「ウーン……」みたいな感じだったのであれはケラリーノ作品としてイマイチだったんじゃないかと思うんですが。
 「なんで急に歌いだすのかわからない」とタモリがミュージカルに関して言っているのは有名だが、私はその点にはそれほど違和感がない。だってそういうもんじゃん、あれは。あれはアトラクションなんですよ。だから三谷幸喜作品で登場人物の声の張り方がおかしくても「まああれはそういうアトラクションだから」で受け入れられるし、昔ロシア文学の授業で見た超意味わかんないシュール以外に表現のしようがないロシアの劇団の「ゴロブリョフ家の人々」も「まあそういうもんかな」で受け入れたし(ゴロブリョフ家の人々という小説は死ぬほど暗いんですよね、ホントあれ以上に陰惨な本は存在しないと思います、夢野久作なんか目じゃありません、日本みたいな島国ではあんな暗い本は書けないんだと思います、所詮日本なんて気候もよくて暮らしやすい島ですよ)、舞台じゃなくなっちゃうけどヒッチコックの映画っていうのは形式とか伏線とかを重視するあまりに登場人物が明らかに不自然な動きをしたりするんですけどまあヒッチコックってそうじゃん、で楽しめる。でもふつうの演劇だと腹から声出してる感じに引いてしまう。つまり私は演劇というものが何を目指しているのか?どう楽しめばいいのか?がよくわからなくて楽しめないわけなのだ。

 ところで先日あまりにも暇すぎてラブライブの映画を見た。新宿スワンでも見るかと思ったんだが満席だったのである。海街ダイアリーみたいなああいう中間色の、水色な感じの、カメラ女子みたいなアレは受け入れられないので……私のような心根の腐り落ちている人間にはあの水色感は耐え切れないので……まだラブライブのほうがマシかと思ったのだ。アニメは嫌いではないので。
 結論から言うとクソつまらなかった。
 わざわざニューヨークに行っておいてほとんど何もせずに帰って来たあたりでもうムリと思って観るのをやめたのでその後むちゃくちゃ面白くなっている可能性もあるが、もうほんとクソつまんなかった。でも思うに、それって演劇が苦手なのと同じで楽しみ方がわかっていないのだ。結局ああいう作品というのは「キャラクター」を愛すべきものなのであって、ストーリーは問題ではないのだ。大好きなキャラクターがニューヨークに行った、という設定を与えられて、いかに自分の中で楽しめるか?それが萌え系アニメの楽しみ方なのである。だから二次創作がこうも盛んなのだ。そういえば昔は私もそういう楽しみ方をしていた。
 そしてそれは本来、幼少期や青年期の楽しみ方なのではないだろうか。好きな人との未来を妄想したり、自分がヒーローになることを想像したり……そういう楽しみ方に近い。(別にそれを続けるオタク文化が幼稚だって言いたいわけじゃなくてね)

 思えばいつのまにか読む漫画はストーリーに重きを置いた絵がゴツい漫画ばかりになった。もやしもんへうげもののようなトリビア的要素を取り入れた漫画をありがたがるようになってしまった。キャラクターを愛し慈しむ心をいつの間にか私は失っていたのだ。青春は、終わった。


 ありがとうラブライブ。ありがとうジュブナイル。そしてさようなら。